2014年07月12日

【読了16】生きるためのサッカー

年に2回、神戸にある「海外移住と文化の交流センター(旧 国立移民収容所)」にお邪魔します。入居団体のひとつ、関西ブラジル人コミュニティ(CBK)さんに日本ブラジル移民の歴史や在日ブラジル人子弟の教育等についてお話を伺うためです。

お話を伺ったり、施設内を見学したりしている間、いつも横のほうでしずかに記録写真を撮ったり、お昼ご飯のブラジル料理を準備してくださる方がいます。それが、CBKのスタッフの松原ネルソンさんです。先日、そのネルソンさんが自叙伝を出版されたと聞き、さっそく購入させていただきました。



普段、ちょっとした世間話ぐらいしかしないネルソンさんのこと、いや〜知らないことばかりでページをめくるたびに驚きでいっぱいでした。ブラジルでの生活、来日後のこと、一度帰国して再来日を決意したときのこと、奥様マリナさんとの出会い、そしてネルソンさんの人生のすべてに影響を与え続けているサッカーのこと。「そうだったんだ。そんなことがあったんだ。」と、心の中で何十回も繰り返しました。

さらに、本書に出てくる数々のブラジル人・日系人・日本人サッカー選手との接点!キャプテン翼のモデルとされる水島武蔵を渡伯前後にお世話していたこと、元・日本代表の山瀬功治を小学校時代に教えていたこと、ヴィッセル神戸の立ち上げにコーチとして携わっていたこと、2002年の日韓W杯でセレソンのお世話をしていたこと、ほかにもいっぱいありすぎて、とにかく驚きの連続。なんと、ブラジルから「フットサル」のルールブックを持ってきて、初の日本語翻訳版を出したのもネルソンさん!

なんでこんなに、日伯のサッカーに影響を与えてきた人を、メディアは取り上げてこなかったんだろう。ネルソンさんに本書の出版を促した方々に感謝です。世に出してくださってありがとうございました!Muito obrigado!!


そして、今は奥様が代表を務めるCBKでスタッフを務めるネルソンさんの指導方針は、サッカーのそれと一環して変わりません。「勉強をやる気のある子や、できる子だけに教えるんだったら簡単だ。みんなが上手だったら教えなくていい。あまりうまくいかないから、どうすればうまくいくかを考えて練習させるんだ。それが指導者の仕事なんだよ」と。

また、CBKに子どもを通わせる親の生活状況について、「コンビニの弁当を作る工場でも、機会の部品工場でも、一年契約というのがなくて、三か月単位の契約も当たり前になっている。雇うのは、いま必要な時だけ。契約が終われば、あとは知らん顔だ。それでよく『おもてなし』だなんて言えるよね。オリンピックを見に来る人より、働きにきている人を『おもてなし』しないといけない。人間をもっと人間として扱わないといけない」と、苦言を呈しています。これにはホントに同感です。


1932年に祖父母がブラジルへ移住。51年後、その孫が日系ブラジル人留学生第1号として来日。紆余曲折を経て、2010年、祖父母が旅立った国立移民収容所(当時)を拠点に、日系人子弟に勉強を教え始める。
人の世は、単に時間軸で流れているのではなく、時空を超えて巡り巡っているんだなぁと思いました。とてもステキな物語(ノンフィクション)です。どうぞご一読あれ。


では、また1月にお邪魔します。
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posted by 土井佳彦(Yoshihiko DOI) at 08:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする