年始以来、2度目のカゼ。移動の疲れってナメちゃだめですねぇ。
おととい、大阪で開かれたシンポジウムに参加してきました。
日本語教育関係にしては珍しく(?)、どれもおもしろい発表でした
国際交流基金関西国センター日本語教育シンポジウム
「ひらく・つなぐ・つくる日本語教育の現場」
<午前の部>
パネルディスカッション「『日本語でケアナビ』と実践的コミュニティー」
午前の部では、ここでも何度かご紹介している、日比EPAによるフィリピン人看護師・介護福祉士の受け入れ準備のひとつとして開発された『日本語でケアナビ』の開発メンバーから、それぞれが工夫した点などをご紹介くださいました。
プロジェクトリーダーの上田和子さんからは、まず開発の流れとして、各種文献から必要な語彙を収集・分析したり、開発メンバー個々の経験やメンバー以外の専門家からのアドバイスを受けながらすすめていったこと、その際に気づいたことや大切にしていたこととして、できるだけシンプルに作ろうとしたが、「シンプル」=「簡単」ではないことなどが紹介されました。
また、2007年7月に一般公開してから、翌月すでに10万件ものアクセスがあり、現在までには40万件を超えたことから、世界とのつながりを実感しているとうれしそうに語っていらっしゃいました。
サイトが日本語と英語の2言語対応ということで、やはりイギリスやアメリカなど英語圏からのアクセスが多いんだそうですが、ほかの国からのアクセスもあり、ユーザーから「ぜひ○○語版もつくってほしい」との要望が寄せられているそうです。
で、フィリピンからのアクセスはというと、(人口比からいって当然)アクセス数はイギリスやアメリカより少ないものの、平均閲覧ページ数と平均滞在時間は断トツで1位(119ヶ国中)とのこと。それだけ、じっくり見て(調べて)いる人が多いってことですね。すごい
開発調査にご興味のある方は、ぜひ 関連論文 もご一読ください。
フィリピン人のジョイ・デヴィラさんからは、ノンネイティブ日本語教師の視点から、「IT利用が不慣れな人もいるので、コンテンツを充実させるだけでなく、使いやすさも大事。また、日本語力はもちろん、文化的背景などの違いを理解するために、お互いの“respect”が大切」だとおっしゃっていました。
さいごの一言は、僕も常々、異文化接触場面だけでなく、すべての人の間において大事なものだと思っています。この政策に関心を寄せるひとりとして、受け入れ側の病院・施設関係者や利用者が、外国人医療従事者に対してどんな気持ちで接するかが心配でなりません。
医療英語翻訳を担当された水野真木子さんは、日英翻訳における留意点をいくつかご紹介してくださいました。たとえば、「お風呂が沸きましたよ。」は、
× The bath water is boiling.
○ Your bath is ready.
これは、「沸く」という日本語に引っ張られてしまうあまり、意味が違ってしまう(boil=沸騰する)例です。
ほかには、「掃除をすると、ほこりが立つ」は、
× If you clean the room,it will be dustry.
○ If you vacuum,it will stir up dust.
これは、「clean」の意味が「きれいになった状態」をあらわすことから、意味不明な訳(きれいになったのに、ほこりが立つ)になってしまうことの例。
これらのことを逆に考えると、英語圏の学習者が辞書を引いて直訳的な日本語を産出した場合に、同じように意味が違ったり、通じなかったりすることがあるってことですよね。
って、日本語教師ならだれでも経験あることでしょうし、だから外国語の知識や比較言語学とかって分野ができてるんですけど、このことを少しでも医療現場の人、せめて指導者の方には知っておいていただきたい点のひとつだと思います で、外国人に日本語を教えるだけでなく、彼らに接する日本人にそういった知識や対処法をアドバイスするのが、今後の日本語教育関係者がもっともっとやっていかないといけないことのひとつだと思うんですよね。
ほかにも、擬態語や擬音語は英語では動詞であらわすことが多いけど日本語の意味と一致しないものがあることや、「まんま/お食事=food」「おべべ/衣服=cloth」のように幼児語と成人語の区別がないものもあること、現場特有の状況とそれに相当する表現を知らないと訳せない/理解できないこと、生活に密着した表現ほどその文化での生活体験がないと訳せない/理解できなことがあるということを教えてくださいました。
6ヶ月もせまいところに閉じこもってちゃ、本当に必要な表現は習得できないことを改めて感じさせられますね。
ウェブデザインを担当された角南北斗さんは、ご自身の日本語教育の経験を生かして、ユーザーの使いやすさを第一に考えたサイトづくりを心がけられたそうです。
その結果、ほかのサイトにはあまり見られない機能が盛り込まれたそうで、たとえば、通常はトップページからしか言語モード(日/英)が選べないところを、どのページからでも切り替えられるようにしたり、どのモードからも、仮名/漢字/ローマ字/英語で検索できるようにしたり、モード間の表示項目や内容の違いがないようにしたり、さらには、学習者の表記に配慮して、「byouin」からでも「byooin」からでも「病院」が、「申し込み」からも「申込」からも「application」がヒットするようにしたりといった工夫をしたとのこと。これにはホンットに感動しました。
…が、これって教えてもらわないとなかなか気がつかないことなんで、ぜひ周りの人にもご紹介したいと思っています。学習者にも、「こんなサイトがあるよ」って言うだけじゃうまく使ってもらえないでしょうしね!
すでにフィリピン人ホームヘルパー(1級取得)として活躍中の原田マリアフェさんからは、「在宅介護の現場では、相手や場面・状況によって、敬体/丁寧体/普通体を使い分けることが大切かつ難しく、利用者と親しくなるほど“方言”でのやりとりが多くなる」こと、また、<話す・聞く>より<書く・読む>ほうにすごく時間がかかるそうで、「記録には、利用者のようすについて書く【観察】と、どんな仕事をしたか書く業務【引継】の2つがあって、書き方によってヘルパー間の人間関係がよくも悪くもなる」ことや、「最近は書かないといけない記録や作成資料が多くなってきているので大変」など、現場の人ならではの苦労をお話してくださいました。医療現場での方言の使用に関しては、近年、日本人医療者−利用者との間でも問題になっているそうで、偶然にもシンポジウムと同じ日のネットニュースに関連記事がありました。これは今後の日本語指導にしっかり生かしていかなければならないと思いました。ぜひ、もう少し詳しくお話を聞きたいところです。
「日本語でケアナビ」についてもっと知りたい!という方は、開発メンバーによる企画・制作過程をつづった、こちら「日本語でケアナビ」開発室をご覧ください。
あっ、ちなみに、このケアナビは携帯版サイトもあるってのご存じでした?
<午後の部>
第3分科会「インターネットでつくる」
午後は、3つある分科会のうち、個人的な関心が大きいIT利用についての実践を聞きに行きました。
有名な「すしテスト」の開発のいきさつや利用状況などは、今後の「とよた日本語学習支援システム」(←近日詳細報告予定)のe−learning開発の参考になりました。
関西国際交流基金の日本語コースにおけるIT活用の実践報告は、参加者(研究者や院生)がお互いに“つながる場”としてのHPやグループサイトの作成・利用方法やその意義など、とても興味深いものでした。
僕も利用しているブログや映像コンテンツ(YouTubeなど)以外に、画像コンテンツのFlickrや協働作業コンテンツのgoogleドキュメント,googleグループなど、知らなかった/使ったことがなかったものもたくさんあったので、これは勉強しなきゃ!と思いました。
『月刊日本語』などでもおなじみ「むらログ」管理者の村上吉文さんは、教師の自己成長や学習者の自律学習におけるブログ活用の意義などをご紹介くださいました。詳しくはご本人のサイトから該当記事をご覧ください。興味深い指摘がいっぱいの当日の発表資料もアップされています。
自己成長における意義については、僕も前に書いたことがありますが、ブログは本当に簡単で効果の高いツールだと実感しています。日本語学習における意義については、しんじさんやyukkiさん、ヒロシさんたちの実践をご覧いただくと感じていただけると思います。
さいごに、関西国際センター日本語教育専門員の三浦多佳史さんは、「IT素人の自分でも、ちょっと興味をもってやってみるといろんなことができるようになった。事前に本を読んだりして勉強するのもいいけど、実際にやりながら困ったら人に聞いたり調べたりして試行錯誤を繰り返すことで覚えていった。日本語もITも本当に役にたつのは、もしこんな場面に出会ったらこうすればいいという“もしも学習”ではなく、困ったとき、知りたくなったときに欲しい情報を手に入れていく“そのとき学習”だということがわかった」と、実践からの体験談をお話くださいました。
こういった実感を具体的な教育実践にどうおとしていくか、その環境づくりやコーディネート、ファシリテートをすることが日本語教師の“本当の”専門性なんだと思います。
以上、長くなりましたがご報告でした。
さいごに、分科会で出た「日本語教師/わたしにとってITとは?」というお題について考えてみました。
ん〜と・・・そうですねぇ
「いいともだち( I i Tomodachi)」ってとこですかね。
おあとがよろしいようで。。。




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